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創業者や偉人の銅像、お寺の大仏など、街のあちらこちらで見かける立派な銅像。この銅像の製法には様々な鋳造法があります。それぞれの鋳造法の特徴とメリット・デメリットを紹介していきますので、参考にしてみてください。
焼型鋳造法は、粘土で造形した鋳型を高温(約900℃)で焼成し、次に約400度程度で空冷した後、溶かした金属を鋳型に流し込み成形する加工法です。小型で複雑な形状の置物から大型サイズまで、多様な形状・サイズの鋳物を成形することができます。溶融金属が徐々に冷えて固まる場合、内部品質を平準化することができますが、これは焼型鋳造法のいち特徴です。作業工程が多くなるのでリードタイムは長くなります。
焼型鋳造法のメリットの一つは、様々な形状・サイズに対応できることです。小さくて複雑な作品から大型のものまで、要求仕様通りに成形することができます。また、焼型鋳造法で仕上げた銅像は鋳肌の良さも特徴です。鋳型がまだ熱いうちに溶融金属を流し込むことで、滑らかで艶やかな表面鋳肌を得ることができます。
焼型鋳造法は仕上がりの良さが特徴ですが、粘土でこしらえた鋳型を約900℃で焼成(銅像の場合は12~16時間)し、型焼を終えた後は400℃程度に空冷して溶融金属を流し込み、冷やし固めて成形するという、作業工程は多くなります。そのため、作製を開始してから作品が仕上がるまでのリードタイムは長くなります。
蝋型鋳造法は、日本においては飛鳥時代や奈良期など古くから利用されてきた伝統的な鋳造法です。文字通り蝋(ロウ)を用いて原型(模型)をつくり、焼型と同じように高温で型焼きを行い、蝋が除去されて生まれた空間に溶かした金属を流し込んで成形を行います。蝋で造形した模型は細工がしやすく、複雑形状の鋳物でもつくりやすいのが特徴です。一方、型焼きや成形の過程では、徐々に加熱しながら蝋を確実に除去していくなど、高い技術を要します。
蝋型鋳造法のメリットの一つは、形状の自由度が高いことです。蝋製の模型(原型)は加工がしやすいため、単純な形状から複雑な形状まで、様々な製品形状を成形することができます。また、原型の風合いの良さが鋳型を通じて鋳物にも転写されるため、艶やかな鋳肌が得られます。鋳造を通じて芸術的な表現を行うのに適した製法といえるでしょう。
蝋型鋳造法では、精度の高い仕上がりを得るためには、型を少しずつ加熱しながら蝋を完全に除去しなければならないなど、高い技術が求められます。また、蝋型鋳造は個性的な作品に仕上げることができますが、一方で大量生産には向かず、一つひとつの型を熟練の職人が時間をかけて丁寧に作製していくスタイルです。
双型鋳造法は、「惣型」や「相型」とも表示される、とても古くから利用されてきた鋳造方法の一つです。作製したい製品を半分に切った形の薄い板を外型用枠に貼り付け、中心棒を中心に板を上下で押さえたまま回転させることにより鋳型を造型します。製法の特徴は、挽き型により直接鋳型を造型することです。双型鋳造法では原型を作る必要はありません。茶釜、梵鐘、鍋、火鉢など円形の鋳物製作に適しています。
双型鋳造法による成形の一特徴は、作品に彫り込む文様が重厚で味わい深いことです。そのため、茶釜、火鉢、梵鐘、仏具など、日本の伝統工芸品や美術工芸品を作るのに適しています。また、成形に用いる外型用枠は耐久性があり、製品形状にもよりますが、数十回の使用に耐えることも可能です。量産性にも優れた鋳造法といえるでしょう。
双型鋳造法は、茶釜・火鉢・梵鐘など円筒形や円錐形の鋳物製作には適していますが、焼型鋳造のように溶解温度の高いブロンズ彫刻鋳造には向いていません。作品により向き不向きがあります。
生型鋳造法は、鋳型製作から製品の仕上がりまでのリードタイムが短いシンプルな鋳造法です。上下対になった木製または金属製の型枠に製品と同形状の原型(模型)と砂を入れて高圧力で押し固め、上下枠と原型を取り外して鋳型をつくります。この鋳型に溶かした金属を流し込むと鋳物が完成するという流れです。
特色は、シンプルな工程とリードタイムの短さ。大量生産にも適しているので、自動車部品などの鋳物製作にも用いられています。比較的安く早く仕上げられますが、ほかの鋳造法と比べて高い精度は得られません。
金型を用いた生型鋳造法は、鋳型の耐久性が高く量産性に優れています。ほかの製法と比べてもリードタイムが非常に短く、かつ工程がシンプルで製品の取り出しも容易なため、短時間で製品を製作することができます。スピーディーな量産が可能な分、コストを抑えられるのも利点でしょう。量産可能なのは単純な形状の鋳物ばかりではなく、中子を用いることによって複雑な形状も制作できます。型は繰り返し使用できるので安心です。
生型鋳造法には鋳型焼成の工程がないため、鋳型内は水分を含んでいます。そのため注湯・鋳込の際、鋳型内で膨張する水蒸気を素早く排出するための通気性を確保しなければなりません。水蒸気が上手く排出できない場合、水蒸気が表面に残ってしまい、不良品となってしまいます。
ガス型鋳造法は、化学反応を利用して粘結材を硬化させ鋳型をつくる砂型鋳造の一種です。鋳物用の砂に水ガラス(珪酸ソーダー)を混合して粘結材をつくり、これに炭酸ガスを吹き込んで鋳型を硬化します。元々は大型の鉄鋳物の中子用に開発されたものであり、それを鋳物師達が青銅鋳物用にアレンジしたものがガス型鋳造法です。
ガス型鋳造法は焼型鋳造法の原理を応用していますが、鋳型の作り方が違います。焼型鋳造では砂鋳型を焼成しますが、ガス型鋳造では鋳物砂と水ガラスを混合した砂型に炭酸ガスを通気して、化学反応により硬化して鋳型をつくります。
工法には様々なものがあり、炭酸ガス法のほか、フェノール樹脂、イソシアネート樹脂、アミンガスなどを用いたコールドボックスなど、工場により工法は多種多様です。
ガス型鋳造法では硬化後に鋳型を抜型できるため、高い寸法精度と表面鋳肌の美しさが得られます。型取の自由度が高いのもメリットです。単純形状はもちろんのこと、複雑形状の造型にも対応しています。銅像をはじめ、大型のモニュメント、パネル、壁面レリーフなどの製作に用いられていることからも、形状自由度の高さが窺えるでしょう。加えて、ガス型鋳造法は量産性にも優れており、たった1個の鋳型でも大量生産が可能です。
ガス型鋳造法の鋳型は基本的に高強度ですが、維持型自体は吸湿性が高いので、時間が経過すると次第に強度が落ちていきます。また、鋳型は水ガラスと炭酸ガスを混合して硬化させるため、使用済みの砂のリサイクルはできません。
ロストワックス鋳造法は、文字通りロウ(ワックス)やポリエチレン樹脂を用いて鋳型を製作する精密鋳造法の一種です。ロウで造形した模型をセラミックで覆い焼き固めて鋳型を製作した後、鋳型を加熱することでロウを溶かして除去(脱ロウ)すれば鋳物が出来上がります。原理は蝋型鋳造法と同じです。蝋型鋳造における蝋の部分を、ロストワックス鋳造ではワックスやポリエチレン樹脂で代替します。鋳型の加熱によりワックスは自然に溶けだして除去されるため、原型を取り出す必要はありません。
ロストワックス鋳造法は、形状の自由度と対応材質の広さが特徴です。単純なものから複雑な形状まで鋳造可能であり、ほとんどすべての材質に対応しています。また、完成時の鋳型の分割が不要なため、工数が減るのもメリットです。
ロストワックス鋳造法のデメリットは、ランニングコストがかかることです。ロストワックス鋳造の鋳型は強度が弱いので、鋳造の度に使い捨てとなり、毎回鋳型を製作する必要があります。結果、ランニングコストがかかるのです。また、鋳型の強度が弱いため大型鋳物はつくれません。
※2…2021年7月時点で公式サイトに掲載されていた情報(等身大69cmの胸像の価格)
※3…2021年7月時点の電話調査による情報
※4…2021年7月の電話調査による情報
※5…2021年7月の電話調査による情報(料金は等身大70cmの胸像の価格)